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厨房男子音楽【Hallelujah I Love Her So】

 個人的なお料理ブームが相変わらず続いている。肉じゃがも作ってみたし、無水カレーに、ブリ大根なるものまでもこしらえてみた。お味噌汁だって出し汁をしっかり取って作っているから、毎日の朝ごはんも楽しみになってきた。”いい暮らし”とか、”幸福感”とか言うものは、こう言ったことだったのかもしれないと、50歳の半ばを過ぎて実感してきた。人より抜きん出ること、勝利すること、お金持ちになることなど、それらに向けて努力してきた自分がいたのだが、どうやらその才能は無かったようだ。けれどもそれを理解したことで、新しい生き方を手に入れることが出来た。もうここから先は、負けたらどうしようとか、失敗したらどうしようとかのプレッシャーからは解放されたと言うことなのだ。ただ自分の暮らしを楽しめばいい。なんて素敵な暮らしだろう。

 もっぱらの休日は台所に立ち、作ってみたいメニューを考えながら実際に作り始める。少しだけ贅沢したワインは、調理酒だと言い聞かせ、昼過ぎには少しづついただきながらも、コトコトと煮込み料理が出来上がってくる。それを待っている間にギターを抱え、お気に入りの曲を演奏してみる。途中でつっかえようが気にしない。とにかく自分が楽しめることが最優先だ。こんな心境になってくると、今まで自分が好きになったミュージシャン達の心境も理解し始めてきた。きっと彼らも演奏を心から楽しんでいたに違いないのだ。その中でもカントリー・ミュージシャンは、その傾向が特に強いのではないだろうか?とにかく皆んなが楽しそうなのである。

 さて、カントリー音楽といえば、チェット・アトキンスや、マール・トラヴィスと、ギターの名手達の名前がどうしても思い浮かんでしまうものだが、忘れてはいけないのがジェリー・リードだ。ジェリーはミュージシャンとしてだけでなく、俳優としても映画などに出演しているからなのか、とにかく上品なユーモアで僕らを喜ばせてくれる。神技のギター・ピッキングに目を奪われがちになるのだが、彼の演奏を見ていると、エンターテイナーとはこういった人のことを言うのだろうと思わずにはいられない。ホントに「うわぁー」と言った歓声と、ため息とが入り混じってしまうのだ。もう表現できない領域である。才能を持ってそれを楽しんでいる人が到達できる境地なのかもしれない。

 さてさて、その才能は無い自分だが、落ち込むことなく進んでいきたいと思う。なぜって、それでも楽しむことは絶対的にできるからだ。それに気がついた今は、本当に毎日が楽しい。だからなんちゃってジェリー・リードだって存分に楽しめているのでした。