投稿者: SIGEN

「新しい生活様式」が始まり、ローカルバンドマンが選んだスタイルは、戦前ブルースマンと呼ばれる人達の様式美。およそ100年前に確立された音楽は、現在の状況さえも癒してくれるのではと研究中。

クラプトンのチケット

 年末に応募していたクラプトンの武道館公演チケットに当選できました。これで4月までの数ヶ月をワクワクして過ごすことができそうで本当に嬉しいです。それにしても今回の日本公演では、海外アーティストとしては初めて、日本武道館での通算100回公演が達成される予定とのこと。いったい遠く離れた日本でも長く愛されてきた要因は何だったのでしょう?そもそもブルースとは縁の薄そうな若い女の娘たちも観に来るのでしょうか?だとしたら古典的なブルースが会場に響いた時のリアクションを観るのも楽しみです。なにせ年末の紅白歌合戦を観ていて、若い世代の歌に付いていけなかった僕は、もっと演歌歌手を出せば良かったのになどと、不謹慎な意見を連発していたからです。だから今度は古いブルースを歌うクラプトンが、若い世代にどう映るのかにも、とても興味を持っています。「ブルースカッコいい」なんて歓声が上がってはくれないでしょうか。もし本当にそうなったら、自分までも褒められているようで嬉しいだろうなと思っています。

 さて、今回の公演ですが、昨年のヨーロッパ・ツアーの流れからみても、エレクトリック・セットもアコースティック・セットも楽しませてくれるステージングになるだろうと思われていて、セット・リストの方は、突然の訃報が届いてしまったジェフ・ベックに対しても、捧げる曲が披露されるのではないでしょうか。実際、昨年のロイヤル・アルバート・ホール公演では、2月に亡くなったゲイリー・ブルッカー(元プロコル・ハルム)に「Lead Me To The Water」が捧げられています。共に時代を歩んで来た盟友へ、きっとジェフのファン達も多く集まっているだろう武道館で、ファン達と一緒に祈りを込めた演奏をしてくれるのではないかと思っています。

 そして今年で78歳になるクラプトン。何よりも元気に来日して欲しいです。昨年のヨーロッパ・ツアーの途中では、自身もコロナウィルスに感染してしまい、復帰がいつになるのかと心配していたファンも多かったはずです。あの曲が聴きたい、この曲もいいなと、リクエストしたい曲はたくさんあるものの、ここまでくると王道のセット・リストでも古いブルースだけでも何でも大丈夫。ただただ元気なクラプトンと楽しい夜を過ごせることを願っています。

Jesus, Etc. / Wilco

 今年も残すところ数日となり、何かと忙しく騒がしい日々を過ごしている。こんな時期はとにかく段取り良く立ち回らないと、仕事以外にもやりたい事を抱えている僕などはやっていけない。どうやってみても40代までのような無理は効かなくなってしまっている。だから最近は曲を覚えたり練習したりするのも細切れにして作業中である。今日はAメロの歌詞だけを覚えようとか、サビに行く前のギターのオブリだけを考えようとかして、少しづつパーツを増やしながら動画の方を完成させている。ま、大変と言えばそうなのだが、それでも形が見えてくると楽しくなってくるのは、まだ小さかった頃の息子達と一緒にLEGOを組み立てていた頃と変わっていないようだ。

 さて、こうして飽きもせずに今年最後の動画を作っているのだが、12本目に選んだ曲はウィルコの「Jesus, Etc.」となった。実はこの曲、出会ったのはノラ・ジョーンズのカバーの方が先で、オリジナルの方は後追いということになる。ノラはジャズ・スタンダードやカントリーなどの古典的な曲も多く歌っているのだが、そのアメリカ音楽を継承しつつも、現代的な実験を繰り返しているこのバンドの曲を取り上げたと言うことに、感慨深いものを感じてしまう。

 それにしても「Jesus, Etc.」は、なんて素敵なラブソングなのだろう。恋人の不安をどうにか和らげてあげようとしている男の背中を思い浮かべてしまう。この主人公の男は、「泣かないで、ぼくを頼ってくれ」と言った後で「僕たちは衛星のような関係」だと歌っている。どんなに悲しい出来事があっても2人の距離は変わらないのだと言いたげだ。たぶん、涙で揺れて見えた高層ビルの前で2人は抱き合っていたのかもしれない。しかしながら、”911のテロ”以来、この歌は、”Tall building shake(揺れる高層ビル)”や、”skyscrapers(スクラップになった高層ビル)”といった印象的な単語が独自の意味を持ってしまった。さらにこの曲が収められたアルバム「Yankee Hotel Foxtrot」のジャケットが”ツインタワー”を連想させることからも、曲が勝手に1人歩きしていくこととなる。実はこのアルバムがリリースされたのは、2002年。それでも当初のリリース予定日は2001年の9月11日だったらしい。

 やれやれ、つまり曲を描いたジェイ・ベネットとジェフ・トゥイーディの2人は未来を予言していたとも言える。過去にも色々な分野のアーティストの作品が未来を言い当てていることがあったと思うのだが、こういった現象は神や悪魔と呼ばれるような誰かに創造させられているのだろうか。

 さてさて、未だにコロナも終息せず、ウクライナでの紛争も続いている。子供達と一緒に作ったLEGOならば簡単に再構築ができたけれど、こういった複雑な問題はそう容易く再構築できそうにない。人間は偉大でもあるが、愚かでもある。いったい来年はどうなるのだろう。心配はこうして尽きないのだが、せめて自分の内側だけは平和でいる努力を続けていこうと思っている。と言うわけで、来年もよろしくお願いいたします。

厨房男子音楽【Hallelujah I Love Her So】

 個人的なお料理ブームが相変わらず続いている。肉じゃがも作ってみたし、無水カレーに、ブリ大根なるものまでもこしらえてみた。お味噌汁だって出し汁をしっかり取って作っているから、毎日の朝ごはんも楽しみになってきた。”いい暮らし”とか、”幸福感”とか言うものは、こう言ったことだったのかもしれないと、50歳の半ばを過ぎて実感してきた。人より抜きん出ること、勝利すること、お金持ちになることなど、それらに向けて努力してきた自分がいたのだが、どうやらその才能は無かったようだ。けれどもそれを理解したことで、新しい生き方を手に入れることが出来た。もうここから先は、負けたらどうしようとか、失敗したらどうしようとかのプレッシャーからは解放されたと言うことなのだ。ただ自分の暮らしを楽しめばいい。なんて素敵な暮らしだろう。

 もっぱらの休日は台所に立ち、作ってみたいメニューを考えながら実際に作り始める。少しだけ贅沢したワインは、調理酒だと言い聞かせ、昼過ぎには少しづついただきながらも、コトコトと煮込み料理が出来上がってくる。それを待っている間にギターを抱え、お気に入りの曲を演奏してみる。途中でつっかえようが気にしない。とにかく自分が楽しめることが最優先だ。こんな心境になってくると、今まで自分が好きになったミュージシャン達の心境も理解し始めてきた。きっと彼らも演奏を心から楽しんでいたに違いないのだ。その中でもカントリー・ミュージシャンは、その傾向が特に強いのではないだろうか?とにかく皆んなが楽しそうなのである。

 さて、カントリー音楽といえば、チェット・アトキンスや、マール・トラヴィスと、ギターの名手達の名前がどうしても思い浮かんでしまうものだが、忘れてはいけないのがジェリー・リードだ。ジェリーはミュージシャンとしてだけでなく、俳優としても映画などに出演しているからなのか、とにかく上品なユーモアで僕らを喜ばせてくれる。神技のギター・ピッキングに目を奪われがちになるのだが、彼の演奏を見ていると、エンターテイナーとはこういった人のことを言うのだろうと思わずにはいられない。ホントに「うわぁー」と言った歓声と、ため息とが入り混じってしまうのだ。もう表現できない領域である。才能を持ってそれを楽しんでいる人が到達できる境地なのかもしれない。

 さてさて、その才能は無い自分だが、落ち込むことなく進んでいきたいと思う。なぜって、それでも楽しむことは絶対的にできるからだ。それに気がついた今は、本当に毎日が楽しい。だからなんちゃってジェリー・リードだって存分に楽しめているのでした。