カテゴリー: フリートウッド・マック

Need Your Love So Bad / フリートウッド・マック

 ピーター・グリーンが在籍していた当時のフリートウッド・マックのベスト版を手に入れました。これがなかなか興味深い曲が多くて正月中は頻繁に聴いていました。ま、どうやらレコード会社の移籍問題で、全アルバムから網羅されていないというところは残念でしたが、それでも挿入されている楽曲は全英第1位になった『Albatross』や、サンタナがカバーして大ヒットした『Black Magic Woman』、そしてエアロスミスがカバーした『Stop Missin’ Around』、『Oh Well』などのブルースが好きなギタリストならではの名曲が満載でした。そうそう、これらの曲はジョー・ペリーが歌っているってところにピーターへのリスペクトを強く感じますよねそして新たなRockの創造をレッド・ツェッペリンよりも先にっやっていた感じがしてきますし、クリーム時代のクラプトンもかなり影響を受けていたはずです。

 さて、ここからは完全に個人的な好みというか、今の自分とのフィット感の話になってしまいますが、ハードなギターサウンドというか重いリズムの楽曲よりも、『Need Your Love So Bad』のノスタルジーを感じる曲に心が動いてしまいます。それはまるで昭和の風景じゃないかと言われてしまいそうなのですが、その切なさや、甘酸っぱさに包まれることを望んでいる自分がいるのです。なぜなのかは分かりませんが、もしかしたら10代の後半に憧れを抱いた大人へのイメージが湧き上がってくるのかもしれません。

 さてさて、結局あの頃に憧れたカッコいい大人にはなれませんでした。自分が大人に成り切ってしまった今、あの頃に憧れた大人のように美学を通せていないのがとても残念です。それでも…ここまでの後悔を強く噛み締めて生きていけば、ここから先は美学を通せるのものなのでしょうか。

I loved another woman / ピーター・グリーン

 ツキイチの更新を目標にしてきた弾き語り動画とこちらのブログですが、ここ数ヶ月はまったく作れませんでした。ギターは相変わらず弾いているのですが、曲を覚えるのに時間がかかるようになってきていたからです。特に英語の歌詞が問題で、昨日は覚えてたはずの歌詞が今日になると跡形もなく飛んでしまっていることが多くなってきてしまっています。他にも肩凝りやら膝の痛みで、長い時間の演奏撮影は無理になってきました。やれやれ…こうして老人になっていくものかと、とてもがっかりしてしまっていたのでした。

 ところが、新しい仕事の繋がりでギター好きの方と仲良くしていただけるようになり、時折お家に招かれてはビンテージのギブソンからフェンダーまでを弾かせていただいたりしているうちに元気になってきました。その方のキッチンがまた素敵で、窓が淡いブルーの枠で縁取られていたりして、まさに古い映画に出てくる異国のキッチンって感じ。好きなアーティストから家族の写真も綺麗に額に入れて飾ってあったりで、イチイチお洒落なのにもヤラレテマス!さらにはD-28もZO-3も適当に置かれているので、食事の最中でもいつでも手に取れる状態。今はひとりで住まわれているようなのですが、その暮らしを存分に楽しんでいるみたいです。自営業の僕としては定年はないので、あと数年したら仕事のペースを落として、もっと料理と演奏を楽しめる時間を増やせたらいいなと思い始めてきました。仲良くなれた先輩のキッチンのように、手作りで改装して自分なりに思い出を重ねていけたらと思っています。

 さて、今回取り上げたフリートウッド・マックの「I loved another woman」ですが、作者はピーター・グリーンで、彼らのデビュー・アルバムに収められている名曲です。フリートウッド・マックは50年以上のキャリアをもち、メンバーも入れ替わることで別のバンドへと変化していくこととなるのですが、それぞれの年代で愛されたバンドでした。それでも僕が好きなのはピーター・グリーンが在籍した初期の時代です。わずか3年間という短い期間でしたが、その間に彼は「マン・オブ・ザ・ワールド」「Oh Well」「ブラック・マジック・ウーマン」などの名曲を数多く作り上げたのです。

 特にマイナー調のブルースをフォーマットにした曲には、なんとも言えない切なさと優しさを感じてしまいます。残念なことにピーターはドラッグ中毒の問題を抱えていたために、幸せな人生だったのかと問えば疑問が残ってしまうのですが、そんな不安を抱えながらも73才まで生き延びたという事実から、そんなに悪くない人生だったように思えてきます。それを象徴するエピーソードのひとつが、1965年にロンドンのセルマー・ミュージックで59年製レスポール・スタンダード“’Burst”に出会い、114ポンドで購入したことから始まった物語です。後にそのギターは、ゲイリー・ムーアへ。そしてメタリカのカーク・ハメットに渡っていきます。その模様はYouTubeでミニドキュメンタリーとして、今も確認することができます。

 ブルースが受け継がれていくもののように、愛したギターまでも引き継がれていったピーター。やはり最後の時を迎えた夜にも幸せを感じていたように思えてくるのです。