投稿者: SIGEN

「新しい生活様式」が始まり、ローカルバンドマンが選んだスタイルは、戦前ブルースマンと呼ばれる人達の様式美。およそ100年前に確立された音楽は、現在の状況さえも癒してくれるのではと研究中。

SAN FRANCISCO BAY BLUES

 クラプトンの武道館チケットが当選した事もあって、「アンプラグド」のリハーサル映像が収録されているDVDを購入してみたりと、ライブへの予習には余念がありません。そして改めてこのアルバムは凄いなと感慨に耽っています。発売されたのは1992年ですから、既に30年の月日が流れているはずなのに、未だに自分を楽しませてくれている事実に驚いているって感じでしょうか。もっと言ってしまえば、若い時に聴いた時よりも、ジワーッといい感じに包まれているような気分です。ようやく僕も、ブルースの旨味を味わえる年齢になってきたということなのかもしれません。

 さて、このアルバムの中での最近のお気に入りは「SAN FRANCISCO BAY BLUES」です。オリジナルはワンマン・バンド・スタイルで’50-’60年代に活動したジェシー・フラーのフォークソングです。ここではクラプトンもフラーに敬意を払い、いつもならギター・ソロをキメる場面でも、カズーを使って演奏を楽しいものにしています。歌詞の内容は「大好きなあの娘が、僕を置き去りにしてサンフランシスコ湾から出て行ってしまった…」って感じの失恋ソングなのですが、ここまで楽しいサウンドで演奏されると、この歌の主人公には「大丈夫だから元気を出しなよ」と、駆け寄りたくもなってしまいます。

 とにかくこうした平和感ってイイですよね。失恋に限らず、悲しく辛い出来事に遭遇したとしても、日にちが経ってから思い返してみたり、その出来事を俯瞰して見れるようになった時には笑い話になっていることさえあります。結局は悲しい出来事を避けれないのが人生だとしても、いつかは笑って話せるようになりたいものです。そのためには呑んで歌って、今日を楽しむって大切だと感じています。

 さてさて、そんな気分を今回も動画にしてみました。見てくれたら嬉しいです。

クラプトンのチケット

 年末に応募していたクラプトンの武道館公演チケットに当選できました。これで4月までの数ヶ月をワクワクして過ごすことができそうで本当に嬉しいです。それにしても今回の日本公演では、海外アーティストとしては初めて、日本武道館での通算100回公演が達成される予定とのこと。いったい遠く離れた日本でも長く愛されてきた要因は何だったのでしょう?そもそもブルースとは縁の薄そうな若い女の娘たちも観に来るのでしょうか?だとしたら古典的なブルースが会場に響いた時のリアクションを観るのも楽しみです。なにせ年末の紅白歌合戦を観ていて、若い世代の歌に付いていけなかった僕は、もっと演歌歌手を出せば良かったのになどと、不謹慎な意見を連発していたからです。だから今度は古いブルースを歌うクラプトンが、若い世代にどう映るのかにも、とても興味を持っています。「ブルースカッコいい」なんて歓声が上がってはくれないでしょうか。もし本当にそうなったら、自分までも褒められているようで嬉しいだろうなと思っています。

 さて、今回の公演ですが、昨年のヨーロッパ・ツアーの流れからみても、エレクトリック・セットもアコースティック・セットも楽しませてくれるステージングになるだろうと思われていて、セット・リストの方は、突然の訃報が届いてしまったジェフ・ベックに対しても、捧げる曲が披露されるのではないでしょうか。実際、昨年のロイヤル・アルバート・ホール公演では、2月に亡くなったゲイリー・ブルッカー(元プロコル・ハルム)に「Lead Me To The Water」が捧げられています。共に時代を歩んで来た盟友へ、きっとジェフのファン達も多く集まっているだろう武道館で、ファン達と一緒に祈りを込めた演奏をしてくれるのではないかと思っています。

 そして今年で78歳になるクラプトン。何よりも元気に来日して欲しいです。昨年のヨーロッパ・ツアーの途中では、自身もコロナウィルスに感染してしまい、復帰がいつになるのかと心配していたファンも多かったはずです。あの曲が聴きたい、この曲もいいなと、リクエストしたい曲はたくさんあるものの、ここまでくると王道のセット・リストでも古いブルースだけでも何でも大丈夫。ただただ元気なクラプトンと楽しい夜を過ごせることを願っています。

Jesus, Etc. / Wilco

 今年も残すところ数日となり、何かと忙しく騒がしい日々を過ごしている。こんな時期はとにかく段取り良く立ち回らないと、仕事以外にもやりたい事を抱えている僕などはやっていけない。どうやってみても40代までのような無理は効かなくなってしまっている。だから最近は曲を覚えたり練習したりするのも細切れにして作業中である。今日はAメロの歌詞だけを覚えようとか、サビに行く前のギターのオブリだけを考えようとかして、少しづつパーツを増やしながら動画の方を完成させている。ま、大変と言えばそうなのだが、それでも形が見えてくると楽しくなってくるのは、まだ小さかった頃の息子達と一緒にLEGOを組み立てていた頃と変わっていないようだ。

 さて、こうして飽きもせずに今年最後の動画を作っているのだが、12本目に選んだ曲はウィルコの「Jesus, Etc.」となった。実はこの曲、出会ったのはノラ・ジョーンズのカバーの方が先で、オリジナルの方は後追いということになる。ノラはジャズ・スタンダードやカントリーなどの古典的な曲も多く歌っているのだが、そのアメリカ音楽を継承しつつも、現代的な実験を繰り返しているこのバンドの曲を取り上げたと言うことに、感慨深いものを感じてしまう。

 それにしても「Jesus, Etc.」は、なんて素敵なラブソングなのだろう。恋人の不安をどうにか和らげてあげようとしている男の背中を思い浮かべてしまう。この主人公の男は、「泣かないで、ぼくを頼ってくれ」と言った後で「僕たちは衛星のような関係」だと歌っている。どんなに悲しい出来事があっても2人の距離は変わらないのだと言いたげだ。たぶん、涙で揺れて見えた高層ビルの前で2人は抱き合っていたのかもしれない。しかしながら、”911のテロ”以来、この歌は、”Tall building shake(揺れる高層ビル)”や、”skyscrapers(スクラップになった高層ビル)”といった印象的な単語が独自の意味を持ってしまった。さらにこの曲が収められたアルバム「Yankee Hotel Foxtrot」のジャケットが”ツインタワー”を連想させることからも、曲が勝手に1人歩きしていくこととなる。実はこのアルバムがリリースされたのは、2002年。それでも当初のリリース予定日は2001年の9月11日だったらしい。

 やれやれ、つまり曲を描いたジェイ・ベネットとジェフ・トゥイーディの2人は未来を予言していたとも言える。過去にも色々な分野のアーティストの作品が未来を言い当てていることがあったと思うのだが、こういった現象は神や悪魔と呼ばれるような誰かに創造させられているのだろうか。

 さてさて、未だにコロナも終息せず、ウクライナでの紛争も続いている。子供達と一緒に作ったLEGOならば簡単に再構築ができたけれど、こういった複雑な問題はそう容易く再構築できそうにない。人間は偉大でもあるが、愚かでもある。いったい来年はどうなるのだろう。心配はこうして尽きないのだが、せめて自分の内側だけは平和でいる努力を続けていこうと思っている。と言うわけで、来年もよろしくお願いいたします。