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Life Without You / スティーヴィー・レイ・ヴォーン

 弾いてみたい曲っていくつもあるけれど、どうしても弾いてみたいと思わせる曲はそうそう多くはないものです。そんな僕にとってレイ・ボーンの「Life Without You」は、いつか弾けるようになりたいと思い続けていた曲でした。初めて聴いたのは3rdアルバム『Soul To Soul』でした。とにかく初めて聴いた時から一瞬で大好きになりました。ですからすぐにでも弾けるようになりたかったのですが‥まだ初心者から脱出できたばかりの僕にとっては、いったいどうやって歌いながら弾いているのか見当もつかない状況だったのです。

 レイ・ボーンが立て続けにアルバムを発表していた’85年頃には、ギター雑誌などで彼の特集が組まれ始めてはいましたが、タブ譜として出てくるのは「Scuttle Buttin」や「Pride and Joy」のようなブルースフレーズの方ばかりで、僕の欲しい情報は見つかりませんでした。今となれば、ジミ・ヘンドリックスの影響を受けて、あのように歌いながらフレーズを弾いたり、歌の裏で合いの手を入れていたことを理解できるようになりましたが、ジミヘンも良く分かっていなかった当時の僕にとっては、そのフレーズだけではく、レイ・ボーンのリズムの取り方も理解できなかったのです。

 あれから40年の月日が流れ、もう一度チャレンジしてみようと思い、まずは何度も曲を聴き込みました。しかしフレーズはある程度コピーできるのですが、リズムの取り方がやはり上手くいきません。ならばと、ギターの師匠である高免先生にアドバイスを頂きました。師匠はジャズギタリストなのですが、音楽全般に詳しくロックでもブルースでもキッチリ解説してくれます。その師匠曰く、「この曲は一般的な4分の4拍子なのですが、歌とドラムがリズムを食って入っているのでリズムを見失いやすいのだと思いますよ」との事でした。そのアドバイスを胸にして、よくよく聴いてみた結果、歌の出だしは前の小節の3拍目から、バスドラは4拍目の裏から入っていました。複雑に聴こえていた理由がここにありました。

 そしてようやく、カッコいいバンドのグルーヴの秘密が分かってきた気分でした。この「リズムの食い」だけを使って、シンプルな8ビートの上でもカッコよくグルーヴしてるバンドってありますよね。それに日本人だとバンド内でも同じように揃えたりする事が多いのですが、海外のアーティスト達は、他の人が埋めていない箇所に音をはめ込んでいく事が多いようです。だから独特なグルーヴが生まれるんですね。

 でもこれをする為には、キチンと他の人の音を理解し聴いていないとムリな話し。適当に他の人の音を聴いて何となく合わせているのでは難しい。レイ・ボーンはダブル・トラブルのメンバーの音を良く理解していたのだと思います。当然、べーシストのトミー・シャーノンと、ドラムのクリス・レイトンもレイの事を理解してくれていたのでしょう。いいバンド人生ってやつです。解り合えること。これがあれば人生の大半は幸せになれますもんね。

 さて、「Life Without You」ですが、この曲はレイ・ボーンが亡くなった親友であるエンジニアに贈った曲です。歌詞の意味も知らずに好きになった曲でしたが、解り合える人を失った後の暮らしの色合いを歌っていたこと知り、ますます大切な曲となりました。とても難しい曲なのですが、これからも歌っていきたいと思っています。