投稿者: SIGEN

「新しい生活様式」が始まり、ローカルバンドマンが選んだスタイルは、戦前ブルースマンと呼ばれる人達の様式美。およそ100年前に確立された音楽は、現在の状況さえも癒してくれるのではと研究中。

I Belong To The Band-Hallelujah! / Rev. Gary Davis

 欲しいモノを手に入れるためには相当の努力が必要だ。いや、努力だけではなく、運も必要になってくる。欲張りに生きるには厳しい世界だ。それでも人生で大切なことはやはり勝つことだ。勝ち組に入ることだと疑わずに生きてきた。

 40代からの負けが重なり、コロナ禍になる前から引きこもり気味になってしまった。当然さらに巣ごもり状態が加速してしまい、残りの人生の時間と幸せについてを考えるようになった。そんな時に盲目の牧師の歌とギターに出会った。とても痺れた。いや、「癒された」が適切な言葉だったかもしれない。

 Rev. Gary Davisは、1920年代頃からノース・カロライナ州のダラムという街の通りで演奏して稼ぐようになる盲目のシンガーだった。後に、もっぱらゴスペルを歌うようになったが、他にもフォーク、ブルース、ラグタイム、そして説法と、宗教歌からユーモアあるものまで幅広く演奏していたようだ。

 弾き語りのスタイルも、ベース・ランをプレイしながらコードとフィルインをハメ込むというやつで、こんな昔に確立させていたのかと驚いてしまう。同年代のブラインド・ボーイ・フラーやブラウニー・マギーだけでなく、タジ・マハール、ボブ・ディラン、ライクーダー、ステファン・グロスマンにまで、数え切れないくらい多くの後継者がいるのも当然なのだろう。

 そして死の直前まで路上で演奏していたと知り、命の使い方と燃やし方のヒントを教えてもらえたような気がして癒されている。盲目というハンディだけでなく差別が当たり前の時代に、いかにして自分と向き合ってきたのだろうか。深い許しと慈悲の力はどこから彼の元へやってきたのだろうか。演奏を聞く度に質問リストが増えてしまうのだ。

 当時、街角で歌っていたゲイリー・デイビスだが、今ならYouTubeで演っていたかもしれない。そう思うと自分も真似したくなった。最初に取り上げた曲は、もちろん彼のカバー。始めて聞いた時から覚えやすいメロディーと、「俺は神様と同じバンドだ」って歌う歌詞を想像しては「なんとかなるさ」「イェーイ!」と、元気が湧いてくるような気がしている。